はじめに
医師の働き方は近年大きく変化しています。病院勤務に加え、在宅医療や訪問診療といった新しい働き方が注目されるようになりました。特に30代の常勤医師にとって、訪問診療は「家庭と仕事を両立しやすい」「キャリアの幅を広げられる」という理由から有力な選択肢になっています。この記事では「医師 転職 訪問診療」をテーマに、そのメリットとデメリット、年収や働き方、患者さんの特徴、未経験から始めるためのポイントを整理しました。
訪問診療とは?
訪問診療とは、病気や障害で病院へ通院できない患者さんの自宅や施設を医師が訪問し、定期的に診療を行う仕組みです。診療内容には次のようなものがあります。
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慢性疾患(糖尿病や高血圧など)の管理
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薬の調整や服薬指導
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認知症患者へのケア
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点滴やカテーテル管理
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終末期の緩和ケアや看取り
訪問診療には二つのスタイルがあります。
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施設型:老人ホームなどで複数の患者さんをまとめて診療する方法。
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個人宅型:患者さんの家を訪問し、生活に寄り添った診療を行う方法。
施設型は効率的に多人数を診られるのが特徴で、個人宅型は患者さんや家族との関係を深められる点に魅力があります。
訪問診療のメリット
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生活リズムの安定:昼間中心の勤務が多く、家族と過ごす時間を確保しやすいです。
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収入面の優位性:病院勤務より高収入となる場合があり、訪問件数や患者数で収入が増えることもあります。
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チーム医療の経験:看護師やケアマネジャーなど多職種と連携し、協調性やコミュニケーション力を高められます。
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やりがいの実感:患者さんや家族からの感謝を直接受ける機会が多く、充実感を得やすいです。
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キャリアの広がり:将来的にはクリニック開業や承継、地域医療のリーダー的役割へとつながります。
訪問診療のデメリット
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オンコール対応:夜間や休日に呼び出しがある場合、自由な時間が制限されます。
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専門技術の維持:手術や特殊検査の機会が少なく、技術維持の工夫が必要です。
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移動の負担:車での移動が多く、運転が苦手な人には負担となります。
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給与制度の違い:年俸制が多く、ボーナスの仕組みが病院と異なることがあります。
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福利厚生の差:小規模クリニックでは福利厚生が限定的な場合があるため、事前確認が重要です。
年収と働き方
訪問診療医の年収はおおよそ1,200万〜2,000万円です。訪問件数やオンコールの有無によって増減します。週4日勤務など柔軟な働き方を選ぶと収入は下がりますが、時給換算では大きな差が出ないこともあります。給与は固定給と出来高払いの組み合わせが多く、割合を確認しておくことが大切です。
勤務時間とオンコール体制
基本は9時〜18時の勤務が多く、残業は少なめです。オンコールの有無や担当頻度はクリニックごとに異なります。夜間や休日を非常勤医師が担当し、常勤医師は日中に専念できる体制を整えている職場もあります。また、移動の効率化のために運転サポートスタッフやICTシステムを導入しているケースもあります。
患者層と対応疾患
訪問診療の患者さんは主に高齢で通院が困難な方々です。糖尿病や心疾患、脳卒中後遺症、認知症など複数の慢性疾患を抱える場合が多いです。また、自宅での緩和ケアや看取りも重要な役割となっています。施設型では効率的に多数を診られ、個人宅型では生活背景を含めてきめ細かく対応できます。
地域ごとの違い
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都市部:クリニック数が多く移動距離は短めですが、競争が激しい傾向があります。
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地方:医師不足により好条件の求人が多い一方、移動距離が長いことがあります。病院との連携体制が整っていない場合は、入院先確保に工夫が必要です。
未経験から始めるには
多くの医師が未経験から訪問診療を始めています。初めは先輩医師に同行して学ぶOJTがあり安心です。常勤が不安な場合は、見学や週1日の非常勤勤務から始める方法もあります。急性期スキルを維持したい場合は、非常勤で外来や手術を継続したり、学会参加で知識を更新する工夫が必要です。
職場選びのポイント
訪問診療の職場を選ぶ際には、次の点を確認しましょう。
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オンコールの有無と頻度
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1日の訪問件数や平均移動距離
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運転サポートスタッフの有無
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固定給と歩合給の割合
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電子カルテやICTの導入状況
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学会や研修支援の有無
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クリニックの将来性や地域での評判
まとめ
訪問診療は、30代常勤医師にとって「働きやすさ」と「やりがい」を両立できる可能性のある働き方です。オンコールや専門技術維持、移動の負担といった課題もありますが、事前に職場の条件を確認すれば安心して取り組めます。まずは見学や非常勤から始めて現場を知るのも有効です。訪問診療で培う経験や人との関わりは、将来のキャリアを豊かにし、地域医療を支える大きな力になるでしょう。